資源循環の車窓から vol.4〜古紙リサイクルの世界トレンド〜

1. 古紙リサイクル 世界各国での歴史

資源循環の車窓から vol.1 では、マツザワが創業当時から取り組んでいる古紙回収について、紹介しました。日本の古紙回収の歴史は江戸時代の「紙屑買い」まで遡り、当時から古紙にまつわる資源循環の文化が形作られてきました。

今回は、世界に目を向け、古紙リサイクルの歴史が長いとされるドイツ、スウェーデンの取り組みを見ていきたいと思います。これら各国では、制度の整備、市民の意識向上、技術革新など、多角的なアプローチによって古紙リサイクルの発展が支えられてきています。

ドイツ:制度と市民参加によるリサイクル先進国

ドイツでは、1991年に施行された「包装条例(Verpackungsverordnung)」により、製造業者や販売業者に対して包装材の回収とリサイクルの責任が課されました。この制度の一環として、デュアル・システム・ドイツ社が、容器包装のリサイクルを促進するためのマーク「グリーンドットマーク(Der Grüne Punkt)」の導入を開始しました。このマークが付いている製品は、製造者がリサイクルコストを負担していることを示し、リサイクル可能であることを意味します。この取り組みにより、紙包装のリサイクル率は大幅に向上しました。 

ドイツのリサイクルマークである「グリーンドットマーク」出所)デュアル・システム・ドイツ ウェブサイト

また、ドイツでは市民の環境意識が高く、家庭ごみの分別が徹底されています。
ドイツの街中には、古紙専用のコンテナが設置されており、住民は新聞紙、雑誌、段ボールなどをここに投入します。家庭用ゴミは、ゴミの種類ごとに色分けされたゴミ箱を利用するのが一般的です。例えば、青色は古紙用、茶色は生ゴミ用、黄色はプラスチック用など、視覚的に分別が促されています。

スウェーデン:循環型社会の実現に向けた取り組み

スウェーデンでは、1970年代から紙のリサイクルに関する政策が強化され、1975年の政府法案では、家庭からの新聞紙の分別回収が義務付けられました。これにより、自治体が回収を担当し、リサイクル業者が処理を行う体制が整備されました。現在では、新聞紙のリサイクル率が95%、紙パッケージが80%、グラフィックペーパーが77%と高い水準を維持しています。 また、リサイクルステーションが住宅地から300メートル以内に設置されており、住民が容易にリサイクルに参加できる環境が整っています。

さらに、ストックホルム市など一部の都市部では、地下パイプを利用したごみ収集システムが導入されています。可燃ごみ、生ごみ、新聞の3種、それぞれ分別して街に設置されているゴミシューターに入れると、時速70kmの空気圧でごみが地下のパイプを通り集積所に送られ、収集ステーションに運搬される仕組みです。

Envac社によるゴミシューター 出所)Envacウェブサイト

2. 古紙リサイクルをホットにするクールな取組み

古紙含む廃棄物を市民が参加しやすく効率的に回収する仕組みづくりが、ヨーロッパ諸国では先進的に取り組まれています。さらに、より多様な視点から「リサイクルしたい!」という市民のモチベーションを喚起するため、これまでにない取り組みも生まれ始めています。

  • リサイクル促進アプリ
    • 古紙含む廃棄物の回収に応じてポイントやリワード(電子マネー・商品券など)がもらえる。
    • 実施例
      • Oystertable(韓国):「Today’s Recycle」アプリを用い、回収ボックスのQRコードと提携企業商品のバーコードをスキャンしリサイクルすると、ポイントをゲット
Oystartableによる「Today’s Recycle」アプリを用いたリワードの仕組み 出所)Oystartableウェブサイト
  • Bower(スウェーデン):「Bower」アプリを通し、ゲーミフィケーションによりリサイクルを促進。ポイントも獲得できる
「Bower」アプリの利用画面 出所)Bowerウェブサイト
  • 画像認識による分別支援
    • 識別が難しいゴミを、画像認識で適切に分別。
    • 実施例
      • Bin-e(ポーランド):AIスマート分別ボックスに搭載されたカメラとセンサーで、ゴミをAIが画像認識。プラスチック、紙、金属などに自動仕分け。B2B向けとして、オフィスビル・コワーキングスペースなどに導入中。
Bine-eによるAIスマート分別ボックス 出所)Bine-eウェブサイト

ともすると、面倒で全部可燃ゴミにされてしまいがちな古紙。ですが、アプリ上のリワードやゲーミフィケーションを通してたのしく、画像認識の力を借りながらわかりやすく、どんどん古紙をリサイクルしたくなるテクノロジーが、広がり始めています。

日本ではこういったテクノロジーはまだあまり普及していませんが、逆にこういったテクノロジーがなくとも、ひとりひとりの意識から、古紙リサイクルが定着しているのではと感じます。日本における古紙の資源循環は、すでに日本が誇るべき文化の一つになっているのではないでしょうか。