資源循環の車窓から vol.5〜古紙リサイクル日本紀行〜

1. 古紙リサイクル日本紀行〜日本各地を回ってみました〜
これまでのコラムでもご紹介してきた通り、日本の古紙リサイクル率は、1970年代の約4割から2020年代に約8割へと大幅に向上し、現在は世界トップレベルの回収体制を築いています。
各地域の施策を俯瞰すると、共通してみられるのは「自治体による制度設計と財政支援」「地域団体による住民巻き込み」「民間による回収・処理・効率化」という三位一体型です。ただし、アクセス性重視か、災害対策重視か、脱炭素連携型かなど、重点分野によって各地域の手法が特化している点から、地域性が垣間見れます。
東北エリア
過疎地域が多い東北では、効率的な回収を実現するために会員制ステーション方式の導入が進んでいます。高齢者や自家用車利用者などを主な利用者とし、自治体は拠点設置や広報支援、民間は会員制ステーションの運営を通じてリサイクル率向上に寄与しています。
関東エリア
関東では、集団回収、戸別回収、拠点回収を併用し、自治体による条例整備や奨励金制度を通じて官・民が緊密に連携しています。災害時の広域回収ネットワークを構築するとともに、情報システムやICTを活用した効率運用が特徴です。自治体が制度設計と支援を担当し、地域の町内会やPTAが主体となって回収活動を実施しています。民間企業は、回収から処理、さらにはICTサービス提供までを担っています。
北陸エリア
北陸では、大都市部ではほぼ全域で古紙回収が実施されている一方で、地方部では過疎化に伴い回収体系の見直しが急務の課題となっています。古紙回収が実施されている地域では、自治体は分別収集計画を整備し、必要に応じて分別物品の支援を行います。一方民間企業は、契約業者として回収・分別拠点のサポートを担います。
関西エリア
関西では、24時間稼働が可能な「エコポスト」やスーパー設置型ステーション、宅配回収など多彩な回収手段が整備されており、アクセス性の高い体制が確立されています。自治体主導の制度設計や支援制度のもと、民間企業が常設回収、宅配、業務回収など多様なチャネルで対応しています。
中国・山陰エリア
戸別回収と拠点回収を併用する構造で、自治体が全体設計と団体支援を行い、地域の廃棄物業者と連携した共同利用により、持続可能な運営体制が構築されています。
四国エリア
自治体が分別計画と研修を重視しており、民間業者との官民協働によって計画的な回収体系の整備が進んでいます。
九州エリア
脱炭素・資源循環と連動した施策が特徴で、自治体はRPFなど燃料化支援制度を活用しながら、認定民間業者による回収・処理・新用途展開を促進しています
2. 古紙リサイクル日本紀行〜関東に行ってみよう〜
古紙回収率や再利用率が高い日本でありますが、とりわけ関東は人口が密集し廃棄物が多いこともあり、制度設計が進み、結果として日本国内でも高いリサイクル率を誇っています。普段は神戸で活動をしているSocial Bridgeですが、今日は関東の古紙リサイクルの様子を覗いてみようと思います。
関東1都3県での取り組みは、「自治体による制度整備と啓発活動の強化」という観点で共通点が見られます。これら全ての自治体において、古紙の分別ルールや回収方法について、明確なガイドラインが設けられており、住民への啓発活動にも積極的に取り組んでおります。区市町村単位で広報誌やホームページを通じて情報提供が行われ、正しい分別の促進が図られています。また、「拠点回収・集団回収の併用」も共通して実践されています。家庭ごみとしての収集(戸別回収)に加え、自治会や学校などが実施する集団回収、スーパーマーケット・公共施設などに設置された回収拠点での持ち込み回収も広く普及しております。これにより、住民のライフスタイルに合わせた柔軟な回収方法が提供されています。さらに、「民間事業者との協働体制」も進んでおり、自治体は回収ルートや日時の調整、助成制度の整備を担いながら、民間企業は効率的な運搬・処理に貢献しています。
一方で、以下特徴に挙げられているような、自治体ごとのユニークな取り組みも見受けられます。
東京都
◼️ 概要
- 東京都は23区、多摩地域、島しょ地域に分かれ、区市町村ごとに制度が異なる。
- 古紙(新聞、雑誌、段ボール、雑がみ等)は資源ごみとして分類・回収。
- 多くの地域で集団回収制度と報奨金制度が整備。
◼️ 特徴
- 区事業としての清掃事業:特に23区では、清掃事業が区の業務として機能しており、回収ルートが細かく整備。戸別収集の体制が整っており、高層住宅向けにも対応可能な仕組みが存在。
- 条例による持ち去り防止:資源持ち去り禁止条例を制定する区(例:江戸川区、台東区など)が増加。
- ICTの活用:回収実績の申請や通知をオンライン化している区も(例:板橋区、杉並区)。
- オフィス町内会モデル:オフィスビルの事業者が共同で古紙を出す取組もあり
◼️ステーホルダー
- 自治体:報奨金支給、物品貸出、監視強化、広報啓発。
- 地域団体:町会・PTA・子ども会などが集団回収を主導。
- 民間企業:登録制度の下で回収・処理を行い、計量・販売まで一貫して担う。
神奈川県
◼️ 概要
- 政令指定都市(横浜・川崎・相模原)を中心に、自治体単位で細やかな分別・回収方法を採用。
- 「資源循環型社会」の推進を掲げ、行政と地域・民間の役割分担が明確。
◼️ 特徴
- テクノロジーの活用:横浜市や川崎市などの大都市圏では、ICTやAIを活用した資源管理が進む。家庭系ごみに混入する古紙の分別を徹底するため、「見える化」された回収ルートやデジタル通知システムが導入されています。
- 回収方式の併用:集団回収、拠点回収、行政回収(市による戸別回収)を組み合わせた回収体制
- 地域ごとの自律運営:町内会ごとに契約業者を選び、回収ルールを調整。
◼️ ステークホルダー
- 自治体:奨励金支給、登録制度運営、リサイクルセンター設置。
- 地域団体:登録し、定期的に回収活動を実施。
- 民間企業:契約に基づき回収、選別、報告、製紙会社等への搬出。
埼玉県
◼️ 概要
- 県全域で古紙回収の取組が活発で、市町村単位で奨励金制度を展開。
- 特に集団回収への奨励金や商業施設の回収ボックス導入が進んでいる。
◼️ 特徴
- 多様な排出機会:自治体+商業施設+学校等に複数の排出チャネル。
- 活発な回収実施状況:県全体で「集団資源回収」が非常に活発であり、自治会・PTA・子ども会などが主体となった回収活動が根付く
- 奨励金:集団回収に対する奨励金の制度が整備されており、回収量に応じて報奨金が支給されるため、地域住民の参加意欲が高い傾向にあります。
◼️ ステークホルダー
- 自治体:助成金支給、商業施設と連携、事業系協力店の認定。
- 地域団体:定期回収・報告によって奨励金を得る。
- 民間企業:処理・計量・報告業務に対応、エリアごとに複数登録業者が存在。
千葉県
◼️ 概要
- 千葉市や船橋市、市川市などの都市部を中心に集団回収+報奨金制度が定着。
- 一部では「リサイクル協同組合」と行政・団体が連携したモデルも。
◼️ 特徴
- 資源ステーションの整備:ステーションの整備が進んでおり、一部自治体では24時間持ち込み可能な回収ボックスの導入が進む。住民による自主的な持ち込みが盛ん。
◼️ ステークホルダー